仙台地方裁判所 昭和46年(わ)53号 判決 1972年3月13日
本籍
宮城県宮城郡松島町松島字町内一一三番地
住居
同上
土産品販売業
鈴木三喜雄
昭和三年三月一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官京秀治郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を罰金四〇〇万円および懲役六月に処する。
右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
但し、本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、宮城県宮城郡松島町字町内一一三番地において、土産品販売業を営んでいた者であるが、店舗改築および不時の出費等に備えて資金蓄積を意図し、所得税を免れる目的で、売上雑収入および仕入の一部を公表帳簿から除外し、これによって得た資金を簿外預金とする等の不正の方法により所得の一部を隠匿したうえ
第一、昭和四二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告人の実際所得金額が一、三〇八万六、七六八円でこれに対する所得税額が五五五万八、七〇〇円であったのにかかわらず、昭和四三年三月一三日塩釜市旭町一七番一五号所在所轄塩釜税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が一八七万六、四一四円で、これに対する所得税額が二七万八、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって同年度分の実際の所得税額と右申告税額との差額五二八万〇、二〇〇円の所得税を免れてほ脱し
第二、昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告人の実際所得金額が一、四六三万九、三〇九円でこれに対する所得税額が六三六万一、七〇〇円であったのにかかわらず、昭和四四年三月一四日、前記所轄塩釜税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が一九一万四、一四六円で、これに対する所得税額が二三万四、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって同年度分の実際の所得税額と右申告税額との差額六一二万六、八〇〇円の所得税を免れてほ脱し
第三、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告人の実際所得金額が一、八一五万〇、五一一円でこれに対する所得税額が八一五万五、九〇〇円であったのにかかわらず、昭和四五年三月一六日前記所轄塩釜税務署において同署長に対し、右事業年度の所得金額が二三五万九、〇六五円で、これに対する所得税額が三二万五、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって同年度分の実際の所得税額と右申告税額との差額七八三万〇、九〇〇円の所得税を免れてほ脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一、第一回公判調書中の被告人の供述部分
一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書一五通
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、被告人作成の上申書六通
一、鈴木きみ子、鈴木寿雄(二通)、福島久夫に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、鈴木きみ子の検察官に対する供述調書
一、武田勇、浜田征雄、丸山照、下館準一郎(二通)、千葉貞夫、中越寿三郎、川上栄二郎、小林捷宏、植田宝、鈴木文吉、松尾音雄、色川武雄に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、下館準一郎、斎藤佳子、岡田ことの各上申書
一、松谷勝雄、木村嘉埠に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、七十七銀行松島支店副長作成の上申書二通
一、七十七銀行登米支店支店長作成の上申書
一、徳陽相互銀行松島支店支店長代理作成の上申書
一、徳陽相互銀行塩釜支店熊谷静雄作成の上申書
一、日興証券株式会社仙台支店支店長代理作成の上申書
一、大和証券投資信託販売株式会社仙台支店支店長作成の上申書
一、佐藤百治に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、中越寿三郎、香川栄三郎、加藤宣勝、井沢洋造の「取引内容の回答について」と題する各書面
一、大蔵事務官菅谷啓造作成の銀行調査書
一、大蔵事務官池田栄一作成の買掛金残高調査書
一、大蔵事務官池田栄一作成の売上除外額調査書
一、大蔵事務官池田栄一作成の仕入除外額調査書
一、大蔵事務官池田栄一作成の減価償却費の計算明細書
一、末永三治、丸山照、田二谷成美、佐貝則夫作成の各上申書
一、佐貝則夫に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、押収にかかる金銭出納帳自昭四二、七、二六至四三、五、二六、一冊(昭和四六年押第八一号の一)
一、同 金銭出納帳(奥金庫分)自昭四〇、二、一至四五、五、一二 一冊(同号の二)
一、同 仕入帳 一冊(同号の三)
一、同仕入月報 一冊(同号の八)
判示第一の事実につき
一、大蔵事務官池田栄一作成の脱税額計算書昭和四二年度分
一、大蔵事務官池田栄一作成の42年分の所得税の修正申告書謄本
一、押収にかかる所得税青色申告決算書昭和四二年度分一綴(昭和四六年押第八一号の九)
一、同 所得税確定書 一綴(同号の一二)
判示第二の事実につき
一、大蔵事務官池田栄一作成の脱税額計算書昭和四三年分
一、大蔵事務官池田栄一作成の43年分の所得税の修正申告書謄本
一、押収にかかる所得税青色申告決算書昭和四三年度分一綴(昭和四六年押第八一号の一〇)
一、同 所得税確定書一綴(同号の一三)
判示第一、第二の各事実につき
一、押収にかかる仕入月報一綴(昭和四六年押第八一号の四)
判示第三の事実につき
一、大蔵事務官池田栄一作成の脱税額計算書昭和四四年分
一、大蔵事務官池田栄一作成の44年分の所得税の修正申告書謄本
一、押収にかかる御通帳一冊(昭和四六年押第八一号の七)
一、同 所得税青色申告決算書昭和四四年度分一綴(同号の一一)
一、同 所得税確定書一綴(同号の一四)
判示第二、第三の各事実につき
一、押収にかかる御通帳二冊(昭和四六年押第八一号の五、六)
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項、第一二〇条第一項第三号に該当するところ、いずれも懲役と罰金を併科するのを相当と認め、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法第四八条第一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条第二項により判示第一ないし第三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役六月および罰金四〇〇万円に処すべく、同法第一八条を適用して、被告人において右罰金を完納することができないときは金二万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、なお諸般の情状に鑑み右懲役刑の執行を猶予するのを相当と認め、同法第二五条に則り、本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 杉本正雄)